静かなノモンハン (講談社文芸文庫)/伊藤 桂一 08046 | 年間365冊×今年20年目 合氣道場主 兼 投資会社・コンサル会社 オーナー社長 兼 グロービス経営大学院准教授による読書日記

静かなノモンハン (講談社文芸文庫)/伊藤 桂一 08046

伊藤 桂一
静かなノモンハン (講談社文芸文庫)
★★★★★


高校の日本史の教科書には

ノモンハン事件 として

欄外に2行ほどしか触れられていない。


だが、日清・日露戦争での快進撃と

その後の日中戦争、第二次大戦での迷走の分水嶺となった

近代日本にとって重要な「大事件」と言われている。


本書は田坂広志先生の本にて度々登場する。

例えば

なぜ働くのか―生死を見据えた『仕事の思想』/田坂 広志 08016


 この小説は、戦争を描いていながら、

 派手な戦闘シーンが出てくるわけではありません。

 むしろ、全体を通じて、静かな描写です。

 ただ、淡々と書かれている。

 しかし、凄まじい重みで、戦争の真実が伝わってきます。


とあり、以前から直接読んでみたかった。



三人の兵士が主人公である。

よく戦記にありがちな「上から目線」の

男の子の勇壮な心をくすぐる物語では、決して無い。


「事件」などではない、激しい戦闘、戦争を

「奇跡的にくぐり抜け生還した三人の目を通して、

無名の兵士達の悲しみ、苦しみ。やり場のない怒りが

ひしひしと伝わってくる。



実は最近、仲良くして頂いていた

取引先の方に不幸があった。

彼は私と同い年。

阪神大震災の中の大混乱を、

共に生き抜いた「戦友」の一人だった。

その彼を失った。


生きるということは何か。

死ぬということは何か。


友の死に直面し

そして本書に巡り会う。


 「生きる死ぬ」の極限の世界を

 想像力の極みにおいて、感じることです。


ノモンハンで犠牲になった八千人の方々の、

そして友の冥福を祈りたい。