静かなノモンハン (講談社文芸文庫)/伊藤 桂一 08046
- 伊藤 桂一
- 静かなノモンハン (講談社文芸文庫)
- ★★★★★
高校の日本史の教科書には
「ノモンハン事件 」として
欄外に2行ほどしか触れられていない。
だが、日清・日露戦争での快進撃と
その後の日中戦争、第二次大戦での迷走の分水嶺となった
近代日本にとって重要な「大事件」と言われている。
本書は田坂広志先生の本にて度々登場する。
例えば
なぜ働くのか―生死を見据えた『仕事の思想』/田坂 広志 08016
に
この小説は、戦争を描いていながら、
派手な戦闘シーンが出てくるわけではありません。
むしろ、全体を通じて、静かな描写です。
ただ、淡々と書かれている。
しかし、凄まじい重みで、戦争の真実が伝わってきます。
とあり、以前から直接読んでみたかった。
三人の兵士が主人公である。
よく戦記にありがちな「上から目線」の
男の子の勇壮な心をくすぐる物語では、決して無い。
「事件」などではない、激しい戦闘、戦争を
「奇跡的にくぐり抜け生還した三人の目を通して、
無名の兵士達の悲しみ、苦しみ。やり場のない怒りが
ひしひしと伝わってくる。
実は最近、仲良くして頂いていた
取引先の方に不幸があった。
彼は私と同い年。
阪神大震災の中の大混乱を、
共に生き抜いた「戦友」の一人だった。
その彼を失った。
生きるということは何か。
死ぬということは何か。
友の死に直面し
そして本書に巡り会う。
「生きる死ぬ」の極限の世界を
想像力の極みにおいて、感じることです。
ノモンハンで犠牲になった八千人の方々の、
そして友の冥福を祈りたい。