日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する/小室直樹 24092 | 年間365冊×今年20年目 合氣道場主 兼 投資会社・コンサル会社 オーナー社長 兼 グロービス経営大学院准教授による読書日記

日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する/小室直樹 24092

 

★★★★★

6年ぶりたぶん3回目。

この本でも肝は「アノミー」

 

 カリスマの保持者は、カリスマを手放してはならない

 

 前章で、日本人がなぜ、いともたやすくアメリカの

 マインド・コントロールを受けたのかについて述べた。

 最大の理由は、終戦によって発生した

 急性アノミーを利用したからである。

 GHQの「日本人洗脳計画」は、戦後日本の恐るべき

 「急性アノミー」現象をさらに拡大再生産した。

 アノミー(anomie)とは何か。

 「無規範」と訳されることもあるが、

 それよりも広く『無連帯のことである。

 アノミー概念については、

 拙著『大東亜戦争ここに甦る」(クレスト社)でも述べたが、

 本書のテーマを理解するうえで、

 不可欠の概念でもあるので、再説しておきたい。 

 

 アノミー概念を発見したのは

 「社会学の始祖」E・デュルケム

 (フランス人、一八五八~一九一七年)である。

 デュルケムがアノミー現象を発見したのは、

 自殺の研究を通じてであった。

 彼は、生活水準が急激に向上(激落の場合だけではない)した場合にも

 自殺率が増加することを発見した。

 

 なぜか。生活水準が急上昇すれば、

 それまで付き合っていた人たちとの連帯が断たれる。

 他方、上流社会の仲間入りを果たすのも容易ではない。

 成上がり者と烙印を押され、容易には、付き合ってくれない。

 かくして、どこにも所属できず、無連帯となる。

 連帯(solidarité)を失ったことで、狂的となり、ついには自殺する。

 

 これがアノミー論の概略。このように生活環境の激変から

 発生するアノミーを「単純アノミー」と呼ぶ。

 その心的効果は「自分の居場所を見出せない」ことにある。

 どうしてよいか途方に暮れる。

 そして正常な人間が狂者以上に狂的となる。

 

ここを読んで、最近衝撃を覚えた

 

先生、どうか皆の前でほめないで下さい
―いい子症候群の若者たち/金間大介 24074

 

を思い出した。

「いい子症候群」とはこのアノミーからの脱却のための

若者たちの無意識な営みなのではないか?と。

この本を小室直樹先生に読んで頂き、コメントして欲しかったなぁ。

 

 そもそも 教育とは何か。

 ルソーは「教育の目的は機械を作ることではなく、人間を作ることだ」

 (「エミール」)と述べた。

 つまり、自分の頭で物事を考えられるような

 人間に育てるということである。 

 そして、実生活で直面するさまざまな問題を

 解決する能力を与えることである。

 そのために必要な知識を教え、

 知力や体力を育てることだ。

 それは、人間は教育されたことを土台と してしか、

 問題を解決できないからである。

 

 ところが、戦後日本の教育はどうだ。

 人間を作ることではなく、

 条件反射するネズミを作ることを目的としているではないか。

 学校は、鋳型にはまった人間を次から次へと生み出す

 鋳物工場と化しているではないか。

 『金太郎飴”の子どもたち。本当に可哀相だ。

 

 入学試験で出題される問題には、

 あらかじめ「正解」が用意されている。

 答えるべき「正解」は一つである。

 マークシートの上で、唯一の正解を塗り潰すことに成功した者だけが、

 優秀と言われエリートとして選抜される。

 正解に達することができなかった者は、

 人生の落伍者となる。 

 学生は入試に出題される可能性がある問題だけを勉強する。

 問題の正解を記憶することだけに汲々としている。

 入試に関係のない学科や問題は勉強しようともしない。

 

このことはグロービス経営大学院、グロービスマネジメントスクールでも

度々申し上げていることだがその時は「そうか!」と思っても

すぐに元に戻ってしまう。

この呪縛が逃れるのは容易ではない。

 

日本国民に告ぐ―誇りなき国家は、必ず滅亡する/小室直樹 18118