構築された仏教思想 空海――即身成仏への道/平井宥慶 24111
★★★☆☆
著者ご本人の主義主張が強く
面白くもあるがちょっとおなか一杯な氣もする。
筆者がまだ大学の教壇に在ったころ、
ときの高名な文芸評論家(同僚でもあった)が目の前で
”歴史とは創作だ〟と発言しておられたのを思い出す。
つまりひとりの論者がどの資料を採りどの資料を捨てて
合理的流れを形成するか、
その取捨選択・価値判断はその歴史論者の選択眼に
委ねられた必要不可分の権利である、ということ、
そういう作業結果で視えてきた歴史像ならば、
これはその歴史学者の〝創作〟とも言い換えられる、と。
架空の歴史物語をつくってしまう捏造物語をいうのではない。
そのかわりに、そこにえがかれた〝歴史〟は、
その作業をしてきた論者の見識が問われることにもなることを、
当該論者は覚悟しなければならない。
と。空海弘法大師の話はいろいろと読ませて頂いてきたので
唐へ渡ったのは灌頂を受けることが目的、など
「おお、ここでここまで言うか」などと思えるが、
初心者にはちょっと偏り過ぎているかも。